5/8 FT誌の社説より

メキシコ湾原油流出についてFT紙が取り上げています。

業界の体質
こうした理由から、原油流出の長期的影響はそれほど重大なものにならないかもしれない。BPとその関連企業、連邦政府、州政府、環境活動家、損害を被った企業とその保険会社は、これから数十年にわたって訴訟合戦を繰り広げることだろう。1989年にアラスカ沿岸で起きたエクソン・バルディーズ号原油流出事故では、最終的に連邦最高裁が懲罰的損害賠償問題に決着をつけるまで、20年近い歳月を要した。だが、エクソンの株価は事故後ほどなく回復し(現場の環境の回復には、もっと時間がかかった)、同社はその後、時価総額で世界最大の上場企業になった。BPの場合も、今年第1四半期に56億ドルの利益を計上しており、たとえ事故処理費用が数十億ドル規模に膨らんだとしても、経営が傾くことはないだろう。議会は海底油田採掘の監督を強化し、過失に対する厳罰化を進めるものと見られる。また、バージニア州のように、それでも知事が採掘許可に前向きな州もあるとはいえ、管轄する海域での採掘を石油会社に許可する州は減るだろう。しかし残念なことに、石油の弊害の責任を問う、これ以上の包括的な取り組みは期待できない。というのは、米国の石油依存症がもたらす問題には、流出事故以上に重大なものがほかにあるからだ。地球温暖化と外国の独裁者への資金提供の方が、間違いなく問題が大きい。皮肉なことに、今回の流出事故は、気候変動対策を議会で通過させる取り組みを後退させ、独裁者により多くのドルを手渡すことになる可能性が高い。ガソリン1ガロン当たりのコスト(環境汚染など)をどう見積もろうとも、米国人が払っているカネはそのコストに遠く及ばない。実際、米国のエネルギー業界は全体に、優遇措置と規制――トウモロコシ原料のエタノールへの補助金から原子力事業者の有限責任に至るまで――を利用することにかけては、飛び抜けて巧みな存在だ。今回の流出事故を受けて制度に手を入れたところで、事態を複雑にするだけだ。海底油田の採掘というのは、便利な製品を得るための妥当な方法だと思われる。安全措置を追加する必要があるかもしれないが、もし政治家に、現在彼らが主張しているほどエネルギー業界を「浄化する」気があるのなら、補助金を削減し、炭素税を導入することで、はるかに大きな成果が得られるはずだ。メキシコ湾での惨事からは遠く離れた話と思えるかもしれないが、長い目で見れば、エネルギー業界というもう1つの「濁った水」も、浄化を必要としているのである。”

だいぶ私がcatch-upするのが遅れたので(これは先週末のモノです)、こうした意見を十分に吟味したうえでの、今朝の毎日の社説だったんでしょーね。

大手メディアとしてはプライドが許さないというのは理解できますが、少なくとも海外ネタについて日本のメディアがマトモな評論できない、ってのはいい加減認めたらどうでしょうかね?2次情報に基づく評論であったとしても、価値のある情報を伝えるという覚悟をする方が余程見識ある大人の対応だと思います。