生命保険業界の収支構造-その1

先般ブログ上でも告知した様に、今後、興味を持った業界について、逐次、収益構造を勉強していきたいと思っています。(正当な批判をするには、どうやって収益を得ているのかを知る必要があるだろう、という問題意識からです。)まず手始めに保険業界から見てみましょう。

ご案内の通り、生命保険業界では、大手がほぼ「相互会社」という会社形態を採っており、「株式会社」形態となっている法人はT&Dだけだった、という認識です。それが本年○月、初めて、第一生命保険が相互会社から株式会社に転換を行い、且つ上場するというステップを踏んだ為、注目を集めました。

なにせ強烈な規制に守られた業界であり収益情報等が全く開示されない、数少ない「昭和」的業界でしたが、世の趨勢には逆らえず、ゆっくりとではありますが、開示される項目が増えてきました。

1)ソルベンシーマージン(比率)の開示
2)三利源の開示
3)保有契約価値の開示


1)支払余力の指標
よく「銀行の自己資本比率に相当するもの」という説明が為されるが、算出式をよく見るとこれは正確ではありません。=(ソルベンシーマージン総額*100)/(リスクの合計額*0.5)
ソルベンシーマージン総額には、基金(資本金)、価格変動準備金、危険準備金、劣後ローン等所謂「資本の部」に相当する項目と共に、貸倒引当金や有価証券含み益等が含まれております。特に「有価証券含み益等」、即ち、生保資産の主たる構成要素であろう有価証券は「時価ベース」で算出されている、という点は注目に値します。完全な「片肺飛行」状態な訳で、これが後述する「負債の時価評価」という話に繋がっていく訳です。
また「リスク」って何だろう?見るからに柔軟な対応ができそうなアイテムです。

2) 営業利益(業界用語では「基礎利益」)をその源泉毎に内訳を示すもの
そもそも、保険金不払い問題で業務停止処分を受けた明治安田生命が業務改善のアピールとして開示した所から始まりますが、06年3月期決算で、第一生命が自主的に開示をして業界に衝撃を与えました。(尤も、これは上場を目指す為に、多分証券会社等からの圧力で「止むを得ず」開示を始めたに過ぎず、全く「自主的」では無かったと思われますが。。)あくまでも予定と実績の差に過ぎないので、十分な分析をするに足るデータではありませんが、それでも、収益構造の概要を知るには十分なデータでしょう。

3)「責任準備金」と「負債」の時価会計
資産だけ時価評価するという、歪な状況が許されるハズも無く、速やかに負債項目の時価評価も要請される事になるでしょう。旧来の予定利率との「逆ザヤ」が、「失われた10年」に頻発した生保の破綻の多くの原因となった訳ですから。。そこを反映しない「健全性のベンチマーク」なんて意味無いですよね。

流石に、生保協会も世論を無視できなくなってきたのか、まとまった情報開示を行っています。
http://www.seiho.or.jp/data/account/index.html